図書館員のためのインターネット:
Pt.3 ホームページの作成とメンテナンス ←戻る

長谷川豊祐:はせがわ とよひろ:鶴見大学図書館
キーワード:インターネット:WWW:ホームページ:HTML


このページは日本図書館協会が発行している『現代の図書館』(1997年6月号)に掲載予定の私の論文をもとに構成してあります。


はじめに

1.インターネットについて

1-1.インターネットとは何か?

1.2.インターネットの仕組みと費用

1.3.基本的なトゥール

a.電子メール b.メーリングリスト

c.FTP d.ネチケット

2.WWWについて

3.HTMLについて

4.ホームページの評価

おわりに

a.WWWサーバーの運用

b.パソコンの基礎知識

c.合意と協力

用語解説

a.ホームページについて

b.ネットワークについて

c.インターネットについて

 

 

参考文献


はじめに 

 都内の公共図書館員約80名が参加する会で、インターネットについて尋ねてみました。「図書館はインターネットを使った方がよい」は全員賛成、「電子メールを使える」は9名、「インターネットをみたことがある」は全員、「個人でホームページを持っている」はゼロ、「図書館にインターネット公開端末がある」は2館でした。また、ほとんどの大学図書館や専門図書館ではインターネット接続を完了し、組織の構成員は電子メールのアドレスを持っています。インターネット技術を使った図書館サービスを展開する環境は整いつつあります。

 図書館ホームページの関しては、96年9月には国立国会図書館がホームページ<URL:http://www.ndl.go.jp/>を開設し、最近1年分のJAPAN MARCの検索を一般に公開しました。10月にはJLAのホームページ<URL:http://wwwsoc.nacsis.ac.jp/jla/>が開設されました。11月には岐阜県立図書館<URL:http://www.smile.pref.gifu.jp/library/>、97年1月には奈良県立図書館<URL:http://www.library.pref.nara.jp/>と、公共図書館のOPACも公開されはじめました。大学図書館では191館(34.4%)でホームページが作成され、65館(11.7%)でWWW OPACが公開されています。◆1)図書館でもインターネットは実用段階に入り、自館のホームページからの情報発信や、インターネット技術を用いた業務が日常的に行われるようになるでしょう。

 図書館報や図書館案内を作っている図書館で、ホームページに載せることを前提にその原稿を作成することができれば、館内のネットワーク担当者がホームページ用の原稿を作り直したり、外注する必要もなくなり、若干の編集作業で常に新鮮なホームページが維持できます。また、館内向けの図書館案内システムを構築する事も可能です。電子メールで業務連絡を回覧したり、会議の事前打ち合わせを行うことができ、館内事務の効率化をはかることができます。また、図書館の各種委員会の会議資料や議事録、組織機構や業務マニュアルなどを、図書館ホームページで公開することにより、内外の利用者への情報公開も可能になります。

 95年12月号では「インターネットの概略」を紹介し、96年6月号では「図書館や図書館員のインターネットへの対応」を考えてみました。そこで、「図書館員のためのインターネット入門」の最終回は、普通の図書館員が組織としての生産性向上のツールとしてインターネット技術を活用できるように「ホームページの作成とメンテナンス」としました。


1.インターネットについて 

 ホームページをうまく活用するにはインターネットについて改めて知っておく必要があります。道具の本質を把握すれば、上手なホームページの作成や利用につながりますし、どんどん進歩する様々なインターネット技術にもとまどうことはありません。


1−1.インターネットとは何か? 

 インターネットについての基本図書からインターネットとその思想を概観し、図書館とインターネットの関係について考えてみます。ここに紹介した基本図書は、図書館員がインターネットとつきあうためには必読です。また、ホームページの作成やメンテナンスに関わる問題の多くも、これらの基本図書によって解決するはずです。

 インターネットは、世界中のコンピュータ同士が自由につながる環境をめざしています。コンピュータを利用するわれわれ人間にとっては、自分のコンピュータを通じて、世界中のコンピュータやその利用者とのコミュニケーションが自由にできることになります。つまり、われわれのかかわる知識や情報を、自由に他のコンピュータや人間と共有し、交換することができます。そのような方法を持たなかった人間に、新たな驚きをもたらし、新たな課題をなげかけます。◆2)

 個人や組織をコンピュータによってつなぎ、それぞれの蓄積している情報を共有し、何かを始めようとすることがインターネットの思想です。図書館がインターネットにつながることは、図書館の蔵書と人的な資源を世界の人たちと共有することです。しかし現実には、異なった館種での現物貸借や文献複写料金の会計処理など、図書館の世界では図書館同士の情報共有さえおぼつかない状況です。このような状況を好転させようと、インターネットに接続して図書館ホームページを開設しOPACを公開する図書館が増えています。さらに、日本の大学図書館の総合目録であるNACSIS Webcat<URL:http://webcat.nacsis.ac.jp/>の「試行サービス」が4月から開始されましたが、様々な要求が外の世界からよせられ、個々の図書館がそれらの要求に応えていくことでしょう。今後の一般公開が待たれるのは、国会図書館と全国の県立・市立図書館27館が参加して700万件の目録データを蓄積したパイロット電子図書館<URL:http://www.cii.ipa.go.jp/>の「総合目録ネットワークプロジェクト」です。インターネットによって図書館の思想が変わろうとしています。

 インターネットはブームの次期を過ぎ、普及・定着の段階に至り、今やマルチメディアの代名詞となっています。◆3) インターネットは「世界最大の百科全書」として機能しており、◆4) また、みんなでワイワイがやがやと楽しい「共愉的な道具」として世界を変える力を秘めています。◆5)

 図書館の予算と人員は慢性的に不足しています。図書館の機械化は、貸出や目録の面では業務を改善しましたが、生涯学習社会がよせる図書館への期待と図書館利用者数の増加に追いついていません。また、機械化やネットワーク化は図書館サービスの向上を促し、業務は複雑化しています。現場の図書館職員にとって、図書館ホームページの開設が明るい話題になるかどうかは、それぞれの図書館のインターネットへの対応にかかっています。インターネットとつきあうことで、図書館員がみんなでワイワイがやがやと楽しく図書館サービスを提供できるようになればよいと思います。

 インターネットは「探したい」「知りたい」人にとっては革命的なツールですが、以外に生活必需品ではありません。◆6)しかし、インターネットは、イソップの「太陽と北風」の太陽のやり方でこれからも発展していくでしょう。◆7)

 インターネットへの思想への対応が遅れている図書館もあります。しかし、図書館が、「探したい」「知りたい」人たちを放置しておくはずはなく、それらの後進的な図書館も先進的な図書館を見習って発展していくことでしょう。


1.2.インターネットの仕組みと費用 

 図書館ホームページを運営する際に注意すべきことは、ホームページを見る側のインターネット接続形態、回線速度、経路です。組織のLANを専用線でインターネットにつないでいる人たちは高速な回線でホームページを快適に見ることができますが、プロバイダーと電話回線でつないでインターネットを利用している個人の場合は、それより低速な回線でホームページを見ているため、大きなデータサイズのページは転送に時間がかかり、画像を表示しない設定でブラウザーを使っている場合もあります。また、商用ネットワークと学術ネットワークや、異なった商用ネットワーク間の速度は同一ネットワーク内よりも遅くなりがちです。

 現在、インターネットの接続には大きく分けて2種類の方法が存在します。組織のLANを専用線でインターネットにつなぐ方法(図1の[1]専用線接続)と、プロバイダーと電話回線でつないでインターネットを利用する方法(図1の[2]電話回線接続)です。

 [ 図1 インターネットの接続形態 ]

 LANを専用線でインターネットにつなぐには、商用プロバイダーなどを経由してサーバーをインターネットにつなぐ必要があります。組織としてのサーバーを持つことによって、組織に固有のドメイン名(会社名.co.jp)を持つことができ、組織の構成員のための電子メールを運営したり、OPACなどのデータベースをWWWサーバーから提供することもできます。専用線を持つことによって、世界中のコンピュータからの要求に応じて、いつでも情報を提供できる「常時接続」が実現できます。しかし、サーバーの設置とそのメンテナンスにはネットワーク管理部門やそれに関わる経費が必要になります。さらに、初期構築費用を別にして、NTTへの専用線の「回線使用料」と、プロバイダーへの「インターネット接続料」をあわせて、最低でも月額で数十万円の経費が必要になります。自前のホームページを維持している企業や団体はこの方式でWWWサーバーを開設しています。大学図書館などの学術ネットワーク(文部省学術情報センターのSINETなど)に接続できる組織や団体の場合には、プロバイダーを経由する必要がないので直接的な「インターネット接続料」は発生しません。

 専用線を維持することが経費的に困難な場合には、電話回線を使ってパソコンを商用プロバイダーに接続する方式になります。プロバイダーへの「インターネット接続料」と接続時間に応じたNTTへの「電話料」をあわせた月額数千円が必要経費になります。個人レベルのインターネット利用はこの方式によっています。また、プロバイダーのサーバーに自分のホームページを置き、情報発信することもできます。さらに、個人で米国のcomドメインを取得し、プロバイダーによるレンタルサーバーを利用すれば、個人でも月額数十ドルでWWWサーバーをもつことが可能になります。

 97年になって注目されている新たな接続方式は、NTTによって4月からサービス開始されたOCNです。従来の専用線よりも安価な接続サービスが提供されます。例えば、4万円を切る「回線使用料」で常時接続が可能な接続サービスもあって、個人レベルでのサーバーの立ち上げも可能な状況になりつつあります。◆8)

 商用プロバイダーの商用ネットワークや学術ネットワークに接続されたサーバー群は、相互接続された専用線によってインターネットを形成しています。海外との接続は大手のプロバイダーや学術ネットワークによって確保され、商用ネットワークと学術ネットワークの接続はWIDEプロジェクト<URL:http://www.widw.ad.jp>やNSPIXP◆9)によって確保されています。これらの接続に関わるすべての費用は、商用プロバイダーを利用している企業、組織、個人の「インターネット接続料」と学術ネットワークを維持する公の資金によってまかなわれています。

 商用ネットワークの相互接続の様子はインターネット関連雑誌に掲載される「接続マップ」や関連する記事により知ることができますが、学術ネットワークの接続の実態は記事として目にする機会はほとんどありません。◆10)ネットワークのルートを個々にたどったり、そのときに要する時間を計ったりするソフトウェアによって手探りで実態を把握するしかないようです。


1.3.基本的なトゥール 

 ホームページの作成とメンテナンスの際に使用するインターネットの基本的なトゥールを簡単に紹介しておきます。まず、ホームページやインターネットに関わる情報収集・交換には、電子メールとメーリングリストが不可欠です。また、ホームページのファイルを入れ替えるためにはFTPアプリケーションを使わなければなりません。


a.電子メール 

 ホームページの作成とメンテナンスを行う場合、電子メールは必須のツールです。関係者との連絡、仕事の依頼、リンクを張りたいホームページの管理者への連絡など、通常は電子メールで行われるからです。メールは宛名を複数指定することで一度に複数の人に送信する同報機能もあります。また、画像や表計算のファイルなどを本文に添付して送ることができ、そのファイルを受け取った側で再利用することもできます。

 電子メールを利用するには自分のメールアドレスが必要になります。個人でインターネット接続サービスを行うプロバイダーに加入して、メールアドレスが取得する場合もあれば、インターネットに接続している図書館の設置母体がメールサーバーを運営しており、ネットワーク管理者がメールアドレスを発行する場合もあるでしょう。メールアドレスは、toyohiro@mxg.meshnet.or.jpのように、@マークの前のユーザー名と、その後のユーザーが所属する組織や国を示すドメイン名で構成されています。

 メールを送信するには、パソコン上での電子メールの送信・受信の処理をおこなうメーラーと呼ばれるソフトウェアを起動し、相手のメールアドレスを指定し、メールのタイトルを書き、あらかじめエディタなどを使って書いておいた文書をメール本文として送信します。受信にはメーラーを起動し、メールファイルの新着メールを読みます。通常はブラウザーに附属しているメーラーを使えばよいでしょう。パソコン通信のユーザーともメールのやりとりができます。

 メールには、半角のカタカナや@“まる1”などの特殊な記号を使わない、一行の長さは30〜35字位で改行しておいた方がよい、などの一般的な注意点があります。


b.メーリングリスト 

 メーリングリストは、電子メールを使って多対多でコミュニケーションを行う仕組みです。共通の話題をもつグループが多数存在します。

 InetDBは、インターネット上で無償で利用できる各種データベース・情報源(政府公開情報、法律・特許、図書・雑誌・新聞等)に関する情報交換を目的としたメーリングリスト<URL:http://www.inetdb.org/forum.html>です。インターネットのユーザーが情報交換を行っているので、インターネットがどのように使われているのかの動向が把握でき、ホームページの構成や内容を再検討する際の役に立ちます。ホームページ上から説明に従って簡単に登録できます。登録者は、95年5月中旬で約350名でしたが、97年3月現在では1400名を越えています。登録者の内訳(表1)をみると個人でプロバイダーと契約している割合が多く、日本におけるインターネットの接続形態を象徴しています。

国別の集計
 日本1367
 米国74
 その他6
 総計1447

日本(1367)の内訳
 or:組織659
 co:企業463
 ac:学術組織 189
 go:政府官公庁 23
 ad:通信業者 6
 その他27

or:組織(659)の内訳
 bekkoame85
 niftyserve 68
 rim62
 so-net36
 asahi-net 29
 iijnet20
 kyoto-inet 20
 meshnet 19
 threewebnet 18
 dtinet11
 その他291

[表1 InetDB登録者数]


c.FTP:File Transfer Protocol 

 WWWサーバーに置いたホームページのファイルを最新のものと差し替えるためにファイル転送を行うソフトウェアが必要になります。サーバー側のホームページを保存してあるディレクトリ構造を変えたり、ファイル名を変更したり、Windows95 のエクスプローラーやWindows3.1のファイルマネージャーのような操作性をもった有償・無償のソフトウェアが提供されています。


d.ネチケット 

 ネットワーク社会で活動するうえでの道徳や礼儀に関するネチケットに関するのホームページ<URL:http://www.edu.ipa.go.jp/mirrors/togane-ghs/netiquette/>をみておくことも必要です。


2.WWWについて 

 世界の情報を受信し、世界に向かって情報発信できるWWWというシステムが、インターネットを爆発的に普及させました。WWWでは、世界に共通したHTMLという形式によって、文書だけでなく、画像や音声、動画などの情報を混在させて、ホームページとして提供します。受信する側はブラウザーを用意するだけです。コンピュータファイルであるインターネット上の情報は、サーチエンジンと呼ばれるトゥールによって自動的に索引化され、さらにインターネットの利用は便利になってきました。さらに、WWWは、「出版」や「放送」などの不特定多数に向けたコミュニケーションを個人が行えるほど身近なものにしました。

 インターネットは、データベース◆11)-14)、ミュニケーションツール◆15)、さらに、市民への情報アクセスの保証◆16)-17)としての活用が注目されています。

 95年は、WWWとインターネットが爆発的に拡大して、96年は、WWWの企業内部への発展とイントラネットが登場しました。97年はイントラネットの拡大から、エクストラネットが登場し、グループウェアの展開が予測されます。予算や人員の不足する図書館では、インターネットの機能を使って図書館サービスを向上させることが必要です。また、内部コミュニケーションの活性化による生産性向上は、非営利サービス機関にとっても重要な課題となるでしょう。ワープロが職場に定着したように、インターネットを文房具として使いこなすことが21世紀の図書館員には求められています。


3.HTMLについ◆18)-19) 

 HTML形式のファイルはHTMLタグを使って記述されます。HTMLファイルの基本構造は、HTMLファイルであることを示す<HTML>タグの範囲、タイトルや特徴などのヘッダ情報であることを示す<HEAD>タグの範囲、本文であることを示す<BODY>タグの範囲の、3つの部分で構成されます。

<HTML>
 <HEAD>ヘッダ情報</HEAD>
 <BODY>本文</BODY>
</HTML>

 ヘッダ情報で使われる主なタグは、ホームページのタイトルを表示する<TITLE>タグです。本文で使われる主なタグは、見出しを指示する<H1>から<H6>タグ、文書の段落を指示する<P>タグ、文書を強制的に改行する<BR>タグ、仕切線を入れる<HR>タグ、箇条書きを指示する<UL><LI>タグ、作成者の情報であることを示す<ADDRESS>タグがあります。

 これらのタグを使ってHTMLファイルのサンプルを作ってみました。

<HTML>
 <HEAD>
  <TITLE>ホームページのサンプル</TITLE>
 </HEAD>
 <BODY>
  <H1>中見出し</H1>
  <H2>中見出し</H2>
  <H3>小見出し</H3>
  本 文 1・・・・・<P>
  本 文 2・・・・・<BR>
  本 文 3・・・・・<P>
  <HR>
  <UL>
  <LI>箇条書き1
  <LI>箇条書き2
  </UL>
  <ADDRESS>作成者の情報</ADDRESS>
 </BODY>
</HTML>

 これを、ネットスケープナビゲーター(Netscape Navigator)ヴァージョン3.0で表示すると(図2)のようになります。これらの文書構造を定義するタグをもとに、ブラウザーはそれらしい大きさやフォントの文字で表示し、

[ 図2 ホームページのサンプル ]

 サーチエンジンは<H1>から<H6>までの見出しタグを抽出してホームページの目次を自動的に作るなど、インターネット上にある情報のデータベース化を容易に行うことができます。HTMLは文書をレイアウトするよりも、文書の構造を規定しているわけです。

 いくつかのワープロソフトでは、段落ごとの「スタイル指定」と、文字の大きさ、フォント、行間などの「スタイル定義」を分離しています。この方式では、先に大見出しであることだけを指定しておいて、最後に文書全体を見渡してから各々のスタイルの文字の大きさを決めれば、文書中のすべての見出しや段落の文字の大きさを変更できます。HTMLはこのような文書作成方式と同じ考え方をとっています。このように「スタイル指定」と「スタイル定義を分離して文書を作成するワープロソフトでは、文書をHTML形式で保存することもできるようになっています。

 WWWで特徴的なのはハイパーリンクや画像などのデータも扱えることです。リンクは、他のホームページ、他の文書、同一文書中の他の箇所との関連付けをおこない、マウスのクリックだけでネットサーフィンを可能にします。


4.ホームページの評価 

 効果的なホームページ作成のポイントを以下にまとめてみました。◆20)-21)

 大学図書館ホームページの5段階評価をおこなっているホームページ◆22)もあるので、ホームページの載せる内容に検討の際に参考にするとよいでしょう。評価は3つの観点からおこなわれています。

1.図書館の利用の促進(特に学外の利用者)
  ・利用資格,学外利用者のためのガイド,開館日や時間を示したカレンダー
  ・大学と図書館の位置,入館の手順の説明
  ・OPACをインターネットで提供
  ・外国語による案内
2.図書館の学内向けPR
  ・図書館の利用状況のPR,統計
  ・自己評価などの公開
3.独自のデータベースやレファレンスツールの提供
全体として,親切であり,情報量が多い場合に高く評価しています。

 +3〜-1ポイントまでの評価項目の得点によって、図書館ホームページはA〜Eに評価されます。+3ポイントの評価項目は「ホームページがある」「OPACをWWWで提供」、-1ポイントの項目は「ホームページ(1ページ目)に大きな画像」「館長挨拶がある」などとなっています。使いやすいので筆者も参考にしているホームページは、おおむねよい評価を得ています。


おわりに 

 図書館の生産性向上のツールとして図書館員がインターネットを活用できるように、ホームページの作成とメンテナンスを今回のテーマに取り上げましたが、図書館がインターネットを使いこなすことの困難さを改めて認識しました。しかし、自宅から、図書館のOPACを検索して、みつけた本が読むに値するかどうか目次をながめて検討し、その場でホームページから貸出予約や自宅への郵送を依頼できたらどんなに便利でしょう。解決しなければならない現在の様々な課題をかかえた図書館員が、インターネット関連の以下の課題を克服できることを期待したいと思います。


a.WWWサーバーの運用 

 インターネットへの接続や、図書館サーバーの維持・管理は、組織としてのネットワーク管理の問題なので割愛しました。しかし、データ蓄積量の増えた図書館ホームページ全体を全文検索したり、OPACを公開するには、WWWサーバーの運用にまで踏み込む必要があるでしょう。


b.パソコンの基礎知識 

 インターネット以前の問題として、パソコンやネットワークの基本事項についての理解が必要です。一口にインターネットに接続してホームページの作成とメンテナンスを行うといっても、パソコンのOS(Macintosh、Windows3.1、Windows95)、使用するソフトウェア(MS-Word、FTP、メーラー)によって、ネットワークの設定、操作方法、画面の展開が全く違ったものになります。また、ファイルの取り扱いに関して、ディレクトリ構造やファイル形式の理解は欠かせません。


c.合意と協力 

 組織レベルの課題として、ホームページの制作企画とタイムスケジュールの作成、館員や大学当局の合意と協力、図書館ホームページの推進・評価・維持こそが重要な課題です。


用語解説 

 本稿の理解を助けるため、いくつかの資料◆23)-24)を参考に用語解説をつけました。


a.ホームページについて 

ハイパーテキスト
文書、画像、音声、動画などの様々な種類の情報を相互に関連づけて参照したり引用したりする概念。これを実現したのがWWWである。HTMLにより記述する。
WWW(World Wide Web)
ハイパーテキストやリンクを使った情報提供システム。インターネットで最も利用されるシステム。Webともいう。世界的に共通した形式でハイパーテキストを作成、提供できるシステムで、WWWによってインターネットが爆発的に普及した。
HTML(Hyper Text Markup Language)
ホームページのレイアウトを記述するための言語。文書の中に書式属性を定義する「タグ」を埋め込んだテキストファイルを、ブラウザーは「タグ」の指示する属性を解釈して表示する。
HTMLタグ
タグの機能をおよぼしたい文字列を、開始タグと終了タグではさむ。<タグ名>文字列</タグ名>。HTMLファイルの「全体構造」を定義するタグ、文字の大きさなど「文字の修飾」を定義するタグ、文章の段落などの「仕切り」を定義するタグ、リンクを定義するタグ、「マルチメディアデータの扱い」を定義するタグ、箇条書きなどの「リスト形式」を定義するタグ、「表組」を定義するタグ、ホームページをみている利用者からアンケートや感想などの情報を得るための「フォーム」を定義するタグ、ホームページの画面をいくつかの部分に分割してそれぞれに別のHTMLファイルを表示させる「フレーム」を定義するタグ、などの種類がある。ブラウザーの種類やバージョンによっては「表組」「フォーム」「フレーム」のタグを正確に表現できないものもある。
リンク
文字列やイメージに、文書中の他の箇所、他の文書、他のホームページへの関連づけをおこなう。その文字列やイメージをクリックすることで、自由に他のページやイメージを表示できる。
ブラウザー
HTMLによって記述された情報を表示するためのソフトウェア。ネットスケープナビゲーター(Netscape Navigator)やインターネットエクスプローラー(Internet Explorer)がよく利用されている。ブラウザーはインターネット上で無償で配布されたり、雑誌の付録のCD−ROMに収録されている。最近のパソコンには最初から附属している。
ホームページ
WWWで提供される情報画面のことで、HTMLを使ってWWWブラウザーに表示できるように記述したファイルの集合体のこと。特に、いくつかのページで構成されるホームページの目次や先頭のページをトップページと呼ぶ。
URL(Uniorm Resource Locator)
インターネット上のファイルやホームページの位置を示す統一された書式。例えば、http://www2d.meshnet.or.jp/~st886ngw/は筆者のホームページの位置を表しています。
ドメイン名
インターネット上での組織の正式名称のこと。組織名.組織の属性.国名という形式で表現される。

b.ネットワークについて 

専用線
通常の電話回線は、必要なときに相手の電話番号をダイヤルして相手とつなぐが、専用線では、あらかじめ決められた特定の相手との間を常に接続した状態にする。専用線は月額の利用料金が決まっており、全然使わなくても、常時使っても固定料金である。接続する2点間の距離と通信速度によって料金が異なる。
NSPIXP(Network Service Provider Internet eXchange Project)
インターネットの商用プロバイダー同士の接続や、商用と学術用などの異種ネットワーク間を相互接続する場合に生じる諸問題を研究するために設立されたプロジェクト。これによって商用と学術の最低限の接続が確保されている。「WIDEプロジェクト」を中心として1994年4月から1996年4月までをフェーズ1、それ以降をフェーズ2として今日まで継続されている。
WIDEプロジェクト(Widely Integrated Distributed Environment Project)
コンピュータネットワークを中心とした、新しい情報通信環境の確立をテーマに1988年にスタートした研究プロジェクト。日本最初のインターネット「WIDE Internet」の運営母体でもある。
プロバイダー
インターネット接続を提供する企業や組織。
OCN(Open Computer Network)
NTTが1997年からサービスを開始したコンピュータ通信用の新しいネットワークサービスの名称。従来の専用線は接続した2点間の通信速度(帯域)を保証していたが、OCNでは同一のネットワーク網を複数のユーザーで使うため、通信速度は保証されない。しかし、専用線のように常時接続した状態でありながら、従来の専用線よりも安価な接続サービスが提供される。この通信網はインターネットとも接続しているので、事実上のプロバイダー機能を持つことになる。

c.インターネットについて 

クライアント
サーバーに要求を出し情報を受け取るコンピュータのこと。
サーバー
クライアントからのリクエストに応じて情報を提供するコンピュータのことで、メールサーバー、ネームサーバー、WWWサーバーなどがある。
イントラネット
インターネット技術を使った組織内ネットワークのこと。インターネットの情報提供の仕組みを、企業や学術研究などが組織や施設単位で内部的な情報システムとして運用する。ブラウザーを使って世界のホームページにアクセスするのと同じに、外部からアクセスを許されていない組織や施設内の情報にアクセスできる。
エクストラネット
いくつかの組織のLANをインターネット技術によって結んだ関連組織内ネットワーク。
グループウェア
インターネット技術で組織の共同作業を支援するソフトウェア。
サーチエンジン
いわゆる情報検索システム。インターネット上に存在するあらゆる情報を検索して、その情報の存在するホームページへのリンクを表示する。97年4月に公開されたサーチエンジン goo<http://www.goo.ne.jp/>は、サービス開始後、10日間で100万ページビューを達成したそうです。
ネチケット
NetworkとEtiquetteの合成語で、ネットワーク社会で活動するうえでの道徳や礼儀のこと。
メーリングリスト
電子メールを使って特定の話題や情報を、そのメーリングリストに登録した人たちに配信するシステム。

参考文献 

1) 上田修一. 4年制大学の図書館ホームページ作成状況 (更新:1997.03.15) URL:http://www.slis.flet.mita.keio.ac.jp/~ueda/libwww/libwww.html
   日本の大学図書館と公共図書館のホームページへのリンクもあります。

2) 村井純. インターネット. 岩波新書, 1995.11, 206p. "はじめに"より

3) 中島洋. イントラネット:企業と地域の情報革命. ちくま新書, 1997.2, 205p. p.15より

4) 古瀬幸広. インターネット活用法:可能性を広げるコツとヒント. 講談社ブルーバックス, 1996.7, 205p. p.104より

5) 古瀬幸広; 廣瀬克哉. インターネットが変える世界. 岩波新書, 1996.2, 209p. p.189-91より

6) 4) p.86-87より

7) 2) p.206より

8) 実証!これがOCNだ. インターネットマガジン. No.27, p.318-323 (1997.4)

9) 始動するNSPIXP2: Network Service Provider Internet eXchange Point 2. インターネットマガジン. No.21, p.232-235 (1996.10)

10) ユサコのインターネット接続と、インターネットの商用系と学術系とのつながりについて. USACO Scope. Vol.6, no.2, p.17-18 (1997.3/4)

11) 奥乃博. インターネット活用術. 岩波書店, 1996.11, 112p.

12) (社)情報科学技術協会編. 情報検索のためのインターネット活用術. 日外アソシエーツ, 1996.9 218p.

13) アリアドネ. 調査のためのインターネット. ちくま新書, 1996年

14) 安芸智夫. インターネット情報検索術. かんき出版 6月発行予定
   「目的を持って検索できる中級以上の数は少なく、何を調べていいかわからないという人が多い。調べたいものはみんな違うので、共通項を見つけ出すのが難しい。ユーザーのなかでインターネットを検索ツールと考えている人は非常に少数だろう」との著者のコメントには賛同できる

15) 友成美保. 電子ネットワークは地方に住む楽しさを証明する〜ニューコアラ〜. 情報の科学と技術. Vol.47, No.3, p.129-135 (1997.3)
   データーベースとしてのインターネットではなく、コミュニケーションとして活用している例が紹介されています。データベース指向の図書館員にこそ必要な視点でしょう。

16) 岡部一明. 情報化時代に市民アクセスを保証する図書館--カリフォルニア大学図書館、サンフランシスコ市立中央図書館--. 情報の科学と技術. Vol.47, No.3, p.136-143 (1997.3)

17) 岡部一明. インターネット市民革命. 御茶の水書房, 1996年5月 366p.
   実生活をインターネットがどのように変えていくのかについて、アメリカの例を紹介しています。アメリカ的な個人主義の風土から現れたインターネットは、日本的な「村社会」受け入れられるには時間がかかりそうです。

18) 磯野康孝; 蔵守伸一. HTMLハンドブック. (ナツメ社ハンディ・レファレンス171). 1996.11, 439p.

19) 4)p.113-160 "私家版情報発信作法"

20) Ian Winship; Alison McNab. The student's guide to the Internet. Library Association Pulishing , 1996. 130p.

21) 坂口哲男. 情報機関からのインターネットへの情報発信--講座インターネット活用法第11回. 情報管理. Vol.39, No.12, p.963-973 (1997.3)
   市販の書籍ではあまり触れられていない点が中心に書かれています。「良質な情報発信を行うには技術は最低限度のものが確保できればよく、重要なのは内容に関して十分に理解しているものを担当に加えて内容の充実を図ることである」との指摘は重要です。

22) 上田修一. 大学図書館ホームページランキング (更新:1997.03.15) URL:http://www.slis.flet.mita.keio.ac.jp/~ueda/libwww/libwwwranking.html

23) インターネットマガジンを読むための基本用語辞典. インターネットマガジン. No.23 付録, 1996.12

24) 4) p.183-195 "付録3 本文中に登場した略語・カタカナ専門用語一覧私家版解説つき"

25) Kristen L. Garlock; Sherry Piontek. Building the service-based library Web site : a step-by-step guide to design and options. American Library Assoc. , 1996. 101 p. ISBN:0-8389-0674-5
   ミシガン大学図書館ホームページを作成したスタッフによるWWWサイトを作るための手順書です。内容は、ホームページの有効性、企画とタイムスケジュールの作成、館員や大学当局の合意と協力、Content(中身)の作成、ホームページの表現と構成、推進・評価・維持、です。ここに紹介されていた「インターネット利用とWWW文書作成の研修プラン」をもとに本稿を構成しました。