←戻る 図書館員のためのインターネット

長谷川豊祐

キーワード インターネット:ネットスケープ:メーリングリスト


このページは日本図書館協会が発行している『現代の図書館』(1996年1月号)に掲載された私の論文をもとに構成してあります。


はじめに
1 情報資源としてのインターネット
  1−1 情報資源の内容
  1−2 図書館での活用
2 インターネットの簡単コース
  2−1 インターネットの基礎知識
  2−2 ネットスケープでインターネットへ接続
3 役に立つ情報源
  3−1 書誌情報
  3−2 雑誌関連の情報源
  3−3 検索サーバ:ディレクトリ と サーチエンジン
4 インターネットは貧者の情報資源
おわりに
引用・参考文献

はじめに   このページの最初へ

 新聞や雑誌におけるインターネットのとりあげかたをみると、あまい言葉であかるい未来を約束したり、乗り遅れることの不安をかきたて、やんわりと脅かしたりしている。いくつかのインターネット専門の雑誌◆1)◆も発行され、単行本やMOOKにいたっては、どれを選んだらよいかわからないほど出版されている。さらに、インターネットへの接続を簡単に実現するWindows95の発売により一層の拡大が予想されるインターネットである。
 インターネットは、情報資源として、情報の伝達・交換手段として、組織の生産性向上のトゥールとして、その重要性を増している。図書館においても状況は急展開している。インターネットの情報資源や電子メール機能は、参考トゥール、業務関連の情報収集、利用者/業者/他館の図書館員との連絡手段など、図書館サービスや業務の場面に様々な形で入り込んでくる。これからの図書館員はインターネットを使えたほうが便利であろう。
 さて、進行しつつある情報化社会◆2)◆のなかで、「情報に関する専門家」である図書館員のコンピュータリテラシーは十分なのであろうか。例えば、一人一人の図書館員が電話やFAXや手紙のように、インターネットの最も基礎的な機能である電子メールを駆使できるようになっているのだろうか。図書館員にとってのコンピュータリテラシーはどこまで必要なのだろうか。それとも、図書館サービスにとってインターネットなど必要ないのだろうか。ともあれ、コンピュータリテラシーの実地研修として、インターネットがパソコンやネットワークの大枠を理解する格好の材料となることは間違いないし、図書館員のコンピュータリテラシーの範囲も今後大きく変動するであろう。
 そこで、1995年11月現在での、図書館員のためのインターネットに関する最低限の参考文献リストや、インターネットを初めて使うときの操作の概略をまとめてみることにした。


1.情報資源としてのインターネット   このページの最初へ

1−1.情報資源の内容

 情報資源としてのインターネットは、主題、形態、内容、質、量において多様である。「テキストデータとしては、文学作品や各主題の古典著作、雑誌論文のプレプリントやオフプリント、新聞記事、電子ジャーナルや電子ニューズレター、各種のレポート類、政府・議会関係の文書などがある。また、バイナリデータとしては、パソコンから大型機までソフトウェア、画像ファイルや音声ファイル、いずれも、研究用もあれば趣味的なものもある。データベースも、図書館のOPACやプロスポーツの試合のスケジュールなど、一次情報も二次情報も、商用のデータベースにはないようなものもみられる。このほか、いわゆるブルテンボードシステムによる情報の交換も盛んに行われている。」◆3)◆は、図書館員にとっては親しみやすい説明である。
 一般人向けにいえば、芸術、ビジネス/経済、コンピュータ/インターネット、教育、娯楽、政府、健康、ニュース、レクリエーション、参考トゥール、地域情報、科学、社会科学、社会/文化など、あらゆる情報があふれている。一過性の情報、即時的な情報、個人的な情報も多い。

1−2.図書館での活用

 これらの情報資源は、大学、官公庁、地方自治体、営利企業、非営利団体、個人などにより作成され、ほとんどの場合は無料で利用できる。調査・研究トゥールとして、娯楽として、図書館でのインターネット利用はまだ始まったばかりであるが有効な情報資源となることが予想される。図書館業務での活用例の報告◆4)◆もなされている。
 また、インターネットは、個人レベルから団体レベルでの情報伝達・発信媒体として、個人商店から大企業の営業活動として使われている。電子メールは、業務や趣味に関する情報収集や情報交換をおこなうトゥールとして、電話ほど相手を拘束せず、手紙ほどに時間を要しない。ちょうど電話と手紙の双方の長所が取り込まれている。ビジネスの世界では、電子メールと組み合わせて、情報の共有化、グループウェアの導入を行い、中間管理職の無駄を省くなど、ホワイトカラーの生産性を上げようとする動きが活発である。企業、官公庁、地方公共団体、非営利団体、大学の営業活動、情報発信、広報のためのホームページ開設の例は数えきれない。日本における大学図書館のホームページも開設され、その報告◆5)◆もなされている。
 これらを例外的な動きとして静観するか、早急に追随すべきかの判断は個々の組織の問題である。さらに図書館の場合は、設置母体が展開する情報化政策のなかで、図書館自身の位置づけをも明確にしていく必要があるだろう。◆6)◆


2.インターネットの簡単コース   このページの最初へ

 新しいこと始めるには、世代によっていくつかのパターンがあるそうである。とにかく実物にさわって使ってしまう世代、マニュアル本を読んでから使い始めて試行錯誤する世代、マニュアル本をみてすぐにあきらめてしまう世代である。この辺のマニュアル本や教則本の読書案内を行う図書館員がいたら利用者や設置母体の同僚たちから歓迎されるだろう。ここでは、インターネットの概要と専門用語につ関する必要最小限の資料を紹介する。

2−1.インターネットの基礎知識

 ネットワークのネットワークと称されるように「異なったネットワークを連結するみえない仕組み」で「連結されたネットワークの集合体」がインターネットであり、つながってしまえば全てインターネットのメンバーとなる。東京大学理学部によるTISN、慶應大学によるWIDE、東京理科大学によるBITNETJP/JOIN、科学技術庁による省際研究情報ネットワークのIMnet、文部省学術情報センターによるSINET、パソコン通信のNIFTY−Serve、PC−VAN、ASAHIネット、People、日経MIX、アスキーネット、さらに商用プロバイダに接続した、あらゆる機関のLANや個人のパソコンなどは、全てインターネットのメンバーである。パソコン通信では使える機能が若干少なくなるが、全機能が使えるようになりつつある。インターネットに接続すれば、自宅や職場の机の上のパソコンやワークステーションから、インターネットにある情報資源の利用や、インターネットのメンバーとのコミュニケーションが可能になるわけである。
 必読文献はたったの3つで済ませることができる。インターネットの通信・ネットワークの部分をコンパクトなカラー図版で解説しているもの◆7)◆が1つある。そして、情報資源としてのインターネットを要領よくまとめたもの◆8)◆が2つある。
 現在は、パソコンで使えるマルチメディアとハイパーリンクに対応しているWWWブラウザ◆9)◆からほぼ全てのインターネットの機能が使るようになっている。

2−2.ネットスケープでインターネットへ接続◆10)◆

 昨年は、WWWブラウザーであるモザイク(Mosaic)が、インターネットやWWW(World Wide Web)と同義のように使われていた。しかし今年は、モザイクの開発をした人間たちの設立した会社からモザイクを改良したネットスケープが登場した。評価や非営利目的での試用のための無料版も配布され、現在では世界の7割以上のWWWブラウザーがネットスケープとなっている。
 ネットスケープを立ちあげると設定してあるホームページが表示される。初期設定はネットスケープ社のホームページになっているので、◆(図1)◆では個人用に作成したホームページ◆11)◆に接続するように設定してある。よく行く情報源のサイトをまとめた個人用のホームページを作って、常にそこから出かけるようにすると便利である。


(図1)の説明

3.役に立つ情報源◆12)◆   このページの最初へ

 WWWは漠然とリンクをたどっていても、図書館関連の情報を、出版社、図書館関係団体、情報サービス機関のホームページから探すことができる。そこにあるニュースやプレス・リリース、調査報告書、統計データなどにより、業務関連の情報収集の幅は飛躍的にひろがるだろう。利用者へのインターネット・サービスを円滑にすすめるためには、業務レベルでの経験を積むことが必要である。

3−1.書誌情報

 在庫情報や新刊情報を提供するホームページや他の図書館のOPACは、図書館員にとっては有用な情報資源である。

◆株式会社 図書館流通センター(TRC)  <URL:http://www.trc.co.jp/index.html>
 TRCは1995年1月からホームページを立ち上げ◆13)◆、過去6カ月分の新刊書籍4万件が無料で検索できる。書誌データと表紙の写真の他に、簡単な内容紹介や著者紹介も提供されている。注文も可能である

◆丸 善 (図2)<URL:http://www.maruzen.co.jp>
 丸善は1995年11月からホームページを公開し、和書149万冊、洋書40万冊の書籍のオンラインショッピングのシステムを稼働した。検索は無料で、書籍購入する場合はカード決済のため会員登録(無料)が必要である。

New York Public Library  <URL:http://gopher.nypl.org>
 海外の図書館目録では、日本の図書館目録では経験することのできない件名検索が可能である。SFのコレクションで有名なニューヨーク公共図書館では「日本SFの翻訳」で検索ができた。インターネットを使って驚かされたことのひとつである。

BUBL(the Bulletin Board for Libraries)  <URL:http://www.bubl.bath.ac.uk/BUBL/home.html>
 The BUBL Information Service は、JISC(the Joint Information Systems Committee) により運用されている英国における図書館関連の統合された掲示板システムである。このように大規模なサイトは国外にしか存在しない。今後、国内でも提供されることが期待される。

1)BUBLのホームページにいく。(図3)<URL:http://www.bubl.bath.ac.uk/BUBL/hom 1e.html>
 他のネットワークへのリンクも張られている。
 BUBL Subject Tree を選択すると、UDCで配列された全分野の主題リストになる。

2)LIS;02-Library and Information Science/ を選択する。
 URL<http://www.bubl.bath.ac.uk/BUBL/Library.html>
 世界各国の図書館関係へのリンクが豊富な13のダイレクトリへのリンクと、約250の図書館情報学関係の情報資源への有用なリンクが、リストされている。

3)ここでは、BUBLのGopherメニューである LIS: LIS Resources via the BUBL Gopher を選択する。 (図4)<URL:gopher://bubl.bath.ac.uk:7070/BUBL_Main_Manu/>

4)05-E-BUBL's Journals: Tables of Contents and Abstracts Service から、さらに、E2-BUBL's Journals: Tables of Contents and Abstracts Service を選択する。  <URL:gopher://bubl.bath.ac.uk:7070/BUBL_Main_Manu/E>

5)約300点の図書館情報学関係の雑誌リストが出てくる。(図5)<URL:gopher://bubl.bath.ac.uk:7070/BUBL_Main_Manu/E/E2>

6)そこで、図書館の立場からインターネットに言及している "Internet research" をみてみることにする。最初は1号ごとのリストが現れる。URL:gopher://bubl.bath.ac.uk:7070/BUBL_Main_Manu/E/E2/E2E127>

7)最新号の4巻4号(1994年)を選ぶと目次と抄録が表示される。(図6)Internet research Vol.4, no.4<URL:gopher://bubl.bath.ac.uk:7070/BUBL_Main_Manu/E/E2/E2E127>

3−2.雑誌関連の情報源

 外国雑誌関連のホームページは個人的な興味からチェックしている。特定の目的を持っていたほうがWWWは楽しめる。必然的に電子メールを使う機会も増えてくるし、情報収集のためにメーリングリスト◆14)◆への参加も必要になってくる。メーリングリストに参加していると毎日メールを見る癖がついて、電子メールによる情報交換が円滑に行えるようになる。

◆Serials in Cyberspace: Collections, Resources, and services. (図7)<URL:http://www.uvm.edu:80/~bmaclenn/>
 電子雑誌のコレクションの充実しているホームページ、若干の電子雑誌のリスト、雑誌関連のホームページのリストがある。新しいリストが追加されるので定期的にのぞいている。

◆Tools for Serials Catalogers.  <URL:http://www.library.vanderbilt.edu/ercelawn/serials.html>
 雑誌の目録の基準や動向、特に電子化された雑誌の目録の取り方や所在場所の記述に関するドキュメント、記述のフォーマット、目録関連情報の豊富なホームページへのリンク、雑誌の目録の専門家の電子メールアドレス、電子雑誌のダイレクトリ、雑誌に関する電子雑誌やメーリングリストのリスト、雑誌の目録に限らず図書館の目録業務に関するホームページへのリンクがある。

◆Hyper Journal.  <URL:http://econwpa.wustl.edu/~hyperjrn/contents.hym>
 電子雑誌全般に関するホームページで、新着の電子雑誌のアナウンス、電子雑誌のダイレクトリ、ヨーロッパの電子雑誌、出版に関するサイト、電子雑誌に関する研究調査の概要や参考文献がある。

◆AcqWeb (図8)<URL:http://www.library.vanderbilt.edu/law/acqs/acqs.html>
 受入と蔵書構築に関するホームページ。関連するホームページへのリンクがすばらしい。紹介文では、サイバースペースで迷ってしまった受入・蔵書構築の担当者はここをおとずれることをすすめられている。それ以外の図書館員にも有用なテクニカル・サービスのためのトップ200というリストもある。

3−3.検索サーバ:ディレクトリ と サーチエンジン

 インターネット上には、インターネットの情報資源を検索するための検索サーバーもある。主題でカテゴライズされたホームページのリストは、ホームページ・ディレクトリ、主題ディレクトリ、ナビゲータなどと呼ばれているが、いわばインターネットのイエローページである。サーチエンジンは、ホームページとそのホームページを構成するファイルのURLと紹介文を検索するデータベースである。インターネット上のドキュメントの全文を検索するサーチエンジンもある。ディレクトリやサーチエンジンはインターネットの膨大な情報資源の「入り口」を提供している。特に定まった呼称はないようである。また、「入り口」としてならば、関連主題に対してのリンクが充実しているホームページも十分その役目をはたしている。
 これらのディレクトリやサーチエンジンの比較表もある。◆15)◆データベースの大きさ、ホームページの採録方法(サーバ自身による自動採録とホームページ作成者の申請による登録などがある)、検索対象項目、論理演算など提供される検索機能、更新頻度など、図書館員の気になる項目が比較されている。
 検索語の形式、論理演算の方式、検索結果の表示など、意識的に演出された検索サーバーそれぞれの個性や、自動化された効率的な索引・検索システムをみていると、図書館の資料組織のあり方の是非をあらためて考えさせられる。インターネット上の情報資源の識別・同定、所在場所の表記など、今後、図書館員がその専門性を存分に発揮できる機会はたっぷりある。

◆DejaNews(図9)<URL:http://www.dejanews.com/>
 Usenetを検索する検索エンジン。全文テキストを検索する。とにかく速い。検索するリソースの所在場所の範囲指定、検索結果の出力形式の選択が可能。

◆OpenText(図10)<URL:http://www.opentext.com:8080/omw/f-omw.html>
 強引とも思えるインターネットの情報資源全体の全文テキストを対象とした検索は、自動切り出しされた9億8500万個の索引と1500万個のハイパーリンクをもち、信じられないぐらい早い。日本語への対応も近く実現される。検索を有料化しないと明言している。

◆ODIN
 日本のサーチエンジンはODINが大変に強力である。ODINはWWW全文検索システムで、アンカーやタイトルだけでなく、ページ内の任意の語句でも検索できる。jpドメインを30万URL以上集めている。URLは<http://kichijiro.c.u-tokyo.ac.jp/odin/>である。検索ガイドも親切である。

4.インターネットは貧者の情報資源   このページの最初へ

 インターネットの情報資源の内容をみてみると、印刷媒体と重複した情報が存在しているケースも多い。新聞の最新号や数週間分のパソコン雑誌の全文テキスト、ブリタニカなどの百科事典、雑誌の目次情報や抄録などの2次資料、図書の新刊書籍や在庫リストなどの出版情報や書誌情報などがそれにあたる。インターネットに接続してさえいれば、これらの印刷媒体を所蔵していなくとも、これらの情報資源が利用者に提供可能となる。さらに、印刷媒体として存在しない電子的な情報資源も提供可能となる。外国雑誌の目次・抄録情報などは無料でブラウジングできる。
 インターネットに接続してしまえば、どんなに小さな図書館でも、個人でも、大規模図書館と同じ情報資源を利用できる。インターネットの情報資源については、利用者に提供できる情報量が、大規模図書館と対等になる。冷静にインターネット・ブームを分析すれば、インターネットが、貧しい者、持たざる者のための情報資源であることが理解できるはずである。
 では、インターネットに接続するにはいくらかかるのだろうか。インターネットの接続費用の試算を行ってみた。高額な図書を1セットと2次資料の継続購入と同じくらいの金額である。どこの図書館でも導入可能な金額ではなかろうか。

【ケース1】参考業務用に商用プロバイダからダイアルアップIP接続する場合

1)初期費用
  パソコン      :20万円
  モデム、接続ソフト、
   プロバイダ入会金 :2万円から6万円
2)毎月の経費
  電話回線使用料、
   プロバイダ接続料 :6千円から2万円
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         初年度:40万円
       次年度以降:15万円
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3)「INSネット64」により
 通信速度を上げるなら、追加として
  工事費、機器経費  :約15万円
  月額電話回線使用料 : 5千円
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         初年度:20万円
       次年度以降: 6万円
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【ケース2】図書館に専用線をひいて複数の人間がインターネット接続する場合

1)初期費用
  ワークステーション :百数十万円
  入会金       :6万円
2)毎月の経費
  専用線使用料 64k  :数万円から十数万円
  プロバイダ接続料金 :約20〜30万円
 *管理・運営の人件費を除く
 *複数のパソコンでのLAN構築費用を除く
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         初年度:480万円
       次年度以降:360万円
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おわりに   このページの最初へ

 インターネットがいかに優れた情報資源であろうと、従来の図書館が蓄積した資料と置き換わるわけではない。単純に追加されるだけである。業務の機械化は黙っていても省力化にすすむが、サービス機能の追加となるインターネットは図書館機能を向上させるものの、組織をうまく再構築しないと仕事量を確実に増加させる。印刷媒体の資料は相変わらず購入し、整理し、保管し、利用に供しなければならない。機械化されたOPACや業務システムも維持されなければならない。そこにインターネットや電子メールがつけ加えられる。
 個人レベルでは、情報収集の時間を捻出するために、業務処理の効率化が必要になり、さらに、収集した情報の整理・消化は私的な時間をも圧迫するようになる。そのため、個人レベルでも勤務時間と生活時間のマネジメントが必要になってくる。
 インターネットの情報資源は、従来の一部の専門的研究者を対象とした商業データベースと比べると、学術的な内容よりは娯楽的な内容のものも多く、その情報資源を利用できる人たちの範囲が広がる。レファレンス回答のための代行検索というより、それぞれ興味範囲も主題に対する理解も異なる不特定多数の利用者の直接検索としてサービスを提供することになる。利用者に対する操作指導など、大変な作業を背負いこむことになる。
 従来の図書館サービスの提供、重要性を帯びてくる図書館員のコンピュータリテラシー、求められるマネジメント能力、最近の図書館をとりまく内的な環境は混沌としている。そのような状況の中、あえて図書館がインターネットを通じて情報発信を行い、情報資源の組織化に積極的にかかわることにより、図書館がより開放的なシステムに生まれ変わることを期待したい。

参考・引用文献   このページの最初へ

1) Doors. 朝日新聞社 1995.11- 月刊
  Internet magazine. インプレス 1994.- 月刊
  前者は、社会にとってのインターネットがわかる。
  後者は、インターネット利用の基礎と最前線がしっかりとおさえられている。

2) 大学・官公庁・地方自治体・営利企業・非営利団体・個人にとってのインターネットは多様な可能性をもっている。その可能性を実現する環境が整いつつある。
◇社会がインターネットの可能性を認識しはじめた
 ・阪神大震災の際などに情報発信の威力に気がついた
 ・電子商取引実現の可能性が出てきた
 ・景気浮揚にも寄与しそうだ
◇個人が比較的簡単に利用できるようになった
 ・インターネット接続を標準でそなえた製品の登場
 ・マルチメディア、ハイパーリンク、GUIを備えたパソコン用ブラウザの登場
 ・個人接続をサポートするプロバイダが現れた(低価格、ホームページの提供、近場のアクセスポイント)
◇家庭に情報・通信機器が浸透しはじめた
 ・パソコンやワープロの普及
 ・インターネットでパソコンの利用価値が高まり、利用の幅も広がる
 ・NTTのパソコン通信ユーザー向けの夜間定額料金制度の導入
◇内容がそれなりに充実してきた
 ・情報を探索するツールの充実
 ・無料で利用できる情報は費用対効果に優れている
 ・多種多様な要求にこたえうる内容がある
◇以上をうけて、メディアが頻繁に話題にするようになった

3) 戸田慎一. ネットワ-ク情報資源と図書館・情報サ-ビスの将来. 情報の科学と技術. Vol.44, no.1 p.4-5 (1994.1)

4) 広田とし子. インタ-ネットの使い方--レファレンス業務への導入. 私立大学図書館協会会報. No.102, p.74-80 (1994.6)
  広田とし子. インタ-ネットの使い方--大学図書館における活用事例. 情報の科学と技術. Vol.44, no.1, p.35-41 (1994.1)
  舘田鶴子. インターネット情報源への招待. 医学図書館. Vol.41, no.1, p.46-52 (1994.3)
  市古みどり. インタ-ネットを利用したレファレンスサ-ビス. 専門図書館. No.148, p.6-16 (1994)
  三井幸子. インタ-ネット環境下における目録・書誌・索引情報. 書誌索引展望. Vol.17, no.4, p.14-26 (1993.11)
  広田とし子. インタ-ネット--いま話題のネットワ-ク(図書館の将来像). 現代の図書館. Vol.31, no.2, p.75-81 (1993.6)
  市古みどり. Internetと医学図書館. 医学図書館. Vol.39, no.4, p.362-367 (1992.12)

5) 井上修;平岡博;篠塚富士夫. インタ-ネットによる筑波大学附属図書館蔵書検索サ-ビスについて. 大学図書館研究. No.43, p.61-66 (1994.3)
  檜垣泰彦;有岡圭子;池田宏明. 千葉大学附属図書館のインターネット情報サービス. 医学図書館. Vol.41, no.3, p.277-285 (1994)

6) ここでは詳しくふれないが、大学図書館関連では、学術審議会学術情報資料分科会学術情報部会からの答申や、国立大学図書館協議会図書館情報システム特別委員会次期電算化システム専門委員会の報告などがある。
  公共図書館関連では、「県立図書館の役割と実際 : 都道府県立図書館の実践事例集」(文部省 ; 発売:ぎょうせい , 1995.2)では公共図書館のインターネットへの取り組みにはふれられていないが、通産省・情報処理振興事業協会と国立国会図書館との共同事業である『パイロット電子図書館システム』に総合目録ネットワークプロジェクトがある。
  アメリカの公共図書館の紹介もある。図書館にインターネットがやってきた!. Asahiパソコン. 1994.6.1, p.120-121

7)インターネットのこと全部教えます Part.1. ASCII(アスキー出版) 1994年9月号, p.245-268 (1994.9)
  離れたマシンを遠隔操作 telnet、ファイルを自由に移動させる FTP、有効に活用したい電子メール、インターネットの必修ツール(finger、whois、archie、gopher、wais)が解説されている。コピーする場合、カラーの図が多いので写真モードでとったほうがよい。

8) 武藤佳恭. インターネットの遊び方(連載). bit. Vol.24, no.10 (1992.10)〜Vol.25, no.12 (1993.12)
  接続した画面をふんだんに使ってインターネットの情報資源を紹介しているので、インターネットで何を調べることができるのかがよくわかる。
  戸田愼一;影浦峡;海野敏. インターネットで情報探索. 日外アソシエーツ, 1994.11, 243p.
  インターネットでできることと、インターネットの使い方が、豊富な事例で初心者にわかりやすく紹介されている。用語と表現に注意が払われて索引も充実しているので、真っ先に読むべき本である。インターネット関連書籍や各種の教則本はこの本を読んだ後のほうがよい。

9) WWWブラウザとは、WWWサーバーにHTTPプロトコルでアクセスするWWWクライアントのことである。雑誌や解説書などでは、WWWブラウザとか、単にブラウザと書かれている。モザイク(Mosaic)、ネットスケープ(Netscape Navigator)等が「現時点での」代表的なブラウザである。サーバーとクライアントの概念については、前出の「戸田ほか インターネットで情報検索」(p.5)に簡潔な説明がある。よく出てくる概念なので正確に把握しておく必要がある。

10) Netscape自由自在. Internet Magazine. 1995年8月号, p.65-80 (1995.8)
  薮暁彦;丹波真奈美;. ネットスケープナビゲータ入門Windows版. 工学図書, 1995.7, 199p.

11) ホームページオーナーになるためのHTML入門. Internet Magazine. 1995年10月号, p.75-93 (1995.10)
  ホームページの作り方については、インターネット上にドキュメントもあるし、解説書も多く出版されている。

12) 三井幸子. インターネットの図書館業務への活用. 専門図書館. No.155, p.9-18 (1995)
  図書館業務に関連するホームページを紹介している。図書館関係の情報を入手するためにメーリングリストの有効性が指摘されている。国内については未知数としているが、紹介してされているINETDB以外にも、やはり私的なメーリングリストが運営されていることを、今回調べているなかで何人かの図書館員から知らされた。今後は国内でも、図書館員、教員、情報関係者の垣根を越えて活発になってゆくのだろう。

13) インターネットビジネス利用の立場から 図書館流通センター. Internet Magazine. 1995年11月号, p.126-129 (1995.11)

14)Directory of Electronic Journals, Newsletters and Academic Discussion Lists. 4th ed. Association of Research Libraries, 1994, 588p.
  あらゆる主題に関する440点の電子雑誌とニューズレター、1800点のメーリングリストのディレクトリで、インターネット上には最新バージョンがある。図書館・情報関連のメーリングリストをまとめたリストもある。
  英国のMAILBASE URL<http://www.mailbase.ac.uk/> というホームページもある。英国のメーリングリストの過去のアーカイブがここに蓄積されている。蓄積されたメールの全文テキストを検索するサーチメニューもついているので、最近に特定の話題についての動向を調べるときには便利である。例えば、Follettレポートについて検索した結果から、Follettレポートをレクチャーしているホームページ URL<http://ukoln.bath.ac.uk/follett_lectures/> が存在していることもわかる。メーリングリストをうまく使うことで、情報収集の幅がさらに広がってゆく。もちろん情報を得るだけでなく、発信することも必要である。

15) Courtois, M.P.ほか. Cool tools for searching the Web: A performance evaluation. Online. Vol.19, no.6, p.14-32
インターネットのサーチエンジンの収録対象の数量、検索機能、結果表示機能、データベースの更新頻度についての機能比較表(p.18)がある。

CUI W3 Catalog          40,000 URLs
Harvest                 45,000 Home Page
Lycos                5,600,000 URLs
           small=486,000 URLs
Open Text Web Index  1,000,000 WWW pages
            14,000,000 hyperlinks
WebCrawler             150,000 documents
World Wide Web Worm  3,000,000 URLs
Yahoo                   66,000 entries

  Sherry Pintek; Kristen Garlok(Univ.Michigan). Creating a World Wide Web resource collection. Collection building. Vol.14, no.3, p.12-18 (1995)
  Subject directories として、Yahoo(http://www.yahoo.com/)、WWW Virtual Library(http://www.w3.org/hypertext/DataSources/bySubject/Overview.html)、The Clearinghouse for Subject-Oriented Internet Resource Guides(http://http2.sils.umich.edu/~lou/chhome.html)を、WWW search engines として、The Open Text Web Index(http://opentext.uunet.ca:8080/omw.html)、Lycos(http://lycos.cs.cmu.edu)、WebCrawler(http://webcrawler.cs.washington.edu/WebCrawler/WebQuery.html)、W3 search engines (http://cuiwww.unige.ch/meta-index.html)を紹介している。

16) ここまでは、図書館に関連した資料を選んできたが、インターネットをより深く理解するための資料を何点かあげておく。
 電子図書館の未来. 人文学と情報処理. No.9, p.3-71 (1995.9)
   次号を Part.2 にするとの予告が出ている。
 インタ-ネット<特集>. 情報の科学と技術. Vol.44, no.1, p.2-57 (1994.1)
   よくまとまっている。
 G.スティックス. 電子ネットワークと学術論文. 日経サイエンス. Vol.25, no.2, p.102-109 (1995.2) 原題名:The Speed of Write
   学術情報の流通へのインターネットの影響が解説されている。
 村井純. インターネット. 岩波. 1995.11.30 発売予定 (岩波新書)
 村井純. インターネット宣言:急膨張する超モンスターネットワーク. 講談社, 1995.2.
 高橋徹. インターネット : ビジネスに目覚める巨大ネットワーク. 日本経済新聞社, 1995.3, 182p.
 大前研一. インターネット革命. プレジデント社, 1995.1, 250p.
 Cronin, Mary J.(ボストン大学図書館);黒川利明監訳. インターネット : ビジネス活用の最前線. インターナショナル・トムソン・パブリッシング・ジャパン, 1994.10, 290p. 原書名:Doing business on the Internet ; How the electronic highway is tranforming American company. 1993
 Carl Malamud. インターネット探検記--テクニカル旅行記--. トッパン, 1995, 437p.
   国際規格をインターネットのサーバー上において自由に利用できるようにしようとする著者と、国際規格を販売することによって得る利益を保全しようとする官僚側との対立や、TCP/IPとOSIの関係を背景にしている。
   NSFの資金援助の方針は「油を1滴落とす」戦略(哲学)である。比較的小さな費用で広範なインパクトを達成する方法である。お金を出す際に、NSFNETは通常は半回線分の資金援助をする。ほとんどの国際回線は実際には両側にある2つのPTTでオペレートされており、そして各々は送り側の回線に対して課金する。NSFは合衆国向けの半回線分のコストだけを持ち、これはどこに対しても20%か2、3あるいは4分の1の低額である。ある場合には、相手国が半回線両方のコストを持つことがある。例えば、NORDUnetはNSFが払えるようになるまでの間、合衆国のすべての回線を負担していた。(p.321)
   アクセプタブルユースポリシーは実施することがだんだん難しくなってきている。特にこれを実施する方法が、主要なリンクを渡ってくる特定のグループからのトラフィックを制限するというようなことでは。NSFNETは単にサービスの支払をすることになれば、教育と研究コミュニティーが資金に値するものを得ている限りは、もはやパケットが同業者から来たかどうかは現実には問題とならない。(p.322)(情報の経路と課金)
 横河ディジタルコンピュ-タ株式会社SI事業本部. インタ-ネット商用化に向けて(CIX):アメリカではいま. トッパン, 1993.11, 142p.
   国内のインターネットの技術的でない解説書としては一番古いのではないだろうか。NSFNETバックボーンの Acceptable Use Plicy (AUP) 1992年6月(p.41)、インターネットの商用化(Commercialization of the Internet)、CIX(Commercial Internet Exchange Association:1991/07発足)、商業的展開の予測(p.131-2)、日本における展開(p.132-)が書かれている。